ADMレーザー治療後の炎症後色素沈着

 

シミのQスイッチレーザー治療後の問題点の一つに、炎症後色素沈着(PIH)があります。

炎症後色素沈着は必ず起こるというわけではありませんが、Qスイッチレーザー治療後には程度の差はあっても半数近い人で起こり得ます。

 

 

炎症後色素沈着の発生には患者様の肌質が大きく関与していて、炎症後色素沈着を全く起こさない肌質の人がいる一方、レーザー治療を行うたびにひどい色素沈着を起こす肌質の人がいます。

治療部位や年齢も影響を与えることもあり、以前レーザー治療を受けた時は色素沈着が起こらなかったからといって、その次も大丈夫だとは言い切れません。

ただし、炎症後色素沈着はあくまでも一時的なものであり、最終的には色素沈着は改善し、ほとんどのケースでレーザー治療した部分はきれいになります。

炎症後色素沈着さえなければQスイッチレーザーは本当に誰にでもお勧めできる治療です。

 

 

当院ではQスイッチレーザー治療の前には必ず炎症後色素沈着の可能性について説明を行うので、レーザー治療の症例数の多さに比べて炎症後色素沈着に関するトラブルは少ないと自負をしています。

少なくとも県内においては、当院ほどシミ治療の前に治療後の経過を詳しく説明するクリニックはほとんどないのではないかとも推測しています。

ただ、説明をいくら受けていても、覚えていない患者様もいらっしゃいますし、不安に駆られる方もいらっしゃいます。

 

 

炎症後色素沈着は基本的に改善するものであり、レーザー後の検診は絶対的に必要なものではないのかもしれませんが、適切なアドバイスによって不安を解消し、お互いに安心するためにも検診と繰り返しの説明は重要と考えています。

 

 

ところが、炎症後色素沈着を起こした患者様が、その後予定していた検診に訪れなくなることが時々あります。

何も余計なことはせずに放置していただいているのであればよいのですが、私が恐れるのは、炎症後色素沈着に対する当院の説明に納得がいかずに他の皮膚科で新たに治療を始めてしまうことです。

 

 

もちろん、シミに対する正しい知識を持っていらっしゃる皮膚科の先生を受診していただけるのであれば何の問題もないのですが、つくば市の隣には炎症後色素沈着だろうが何だろうがシミを見たら何でもレーザーを何度も照射し続ける皮膚科もあるので、そのような所にだけは受診してほしくありません。

レーザー後の色素沈着に再度レーザーを照射を受けることは、わざわざお金を出して治療時の痛みを買っているようなものであって無駄な行為です。

無駄どころか、シミをさらに悪化させる可能性もあります。

 

 

炎症後色素沈着は時間が経てばいずれは改善してくるわけですが、色素沈着がなくなればきれいな肌があらわれてきます。

その場合、最終的にシミが消えたのはあくまで当院のレーザーの効果なのですが、不要なレーザーを受けたその患者様はその後の無駄なレーザー治療のおかげで良くなったと誤解するでしょうから、そこもちょっと癪にさわる点です。

 

 

先日、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)のレーザー治療後に色素沈着が起きた後、予定していた通院を中断された患者様が数年ぶりに受診されました。

ADMの治療後は、他のシミよりも炎症後色素沈着が、起こりやすい傾向があります。

しかも、真皮内のメラニンが残ったままの状態に赤みや色素沈着が加わるので、治療前よりもシミが広がって悪化したように見えてしまうため、炎症後色素沈着の説明をあらかじめ受けていても心配になる患者様も多いと思います。

 

 

こちらの患者様は、通院中断後は処方してあったハイドロキノンを塗布する以外には何もしなかったということで、治療部分は非常にきれいに治っていました。

治療前には2回くらいはレーザーが必要だと説明してあったのですが、結果として1回のレーザー治療だけで肌がきれいになってしまいました。

 

治療前のADM

 

レーザー照射後2週間
ADMの色は残ったままで、赤みも生じています。

 

レーザー照射後1.5ヶ月
色素沈着を生じ、かえって目立っています。
この後、通院が途切れました。

 

6年後
ごくわずかにADMは残っていますが、レーザー照射部分の肌
は全般的にきれいになっています。