美容医療機器の価格
前回、医療機器のことを話題にしましたが、では美容医療に使用する医療機器
の価格がいったいいくらくらいするのか,見当がつかない方が,ほとんどだと
思います。
個別の具体的な数字は申し上げられませんが、レーザー、IPL,高周波タルミ治
療器、HIFU(高密度焦点式超音波)、などの器械の多くは大体700~
1000万円+消費税くらいといったところでしょうか。
米国からの未承認器では、80000ドル~85000ドル+輸入時の消費税
+送料、といった器械が多いです。
入れ墨治療において最も有利とされる「ピコ秒レーザー」は、まだ新しいとい
うこともあって、最低1500万円以上もします。
現在は700~1000万円くらいで買えるQスイッチレーザーやI2PLなど
の治療器も、私が初めて買った15年前はいずれも現在のピコ秒レーザーと同様
に1500万円くらいしました。
器械の価格は当然治療費に影響を与えますが、器械によっては非常に高額な消耗
部品を使用するものもあり、器械本体の減価償却費と消耗部品の価格の合算が
治療費に反映されます。
消耗部品の価格が非常に高額な治療機器として代表的なものに、ウルセラ、
サーマクール、ミラドライ、などがあります。
レーザーや光治療器などは、本来本体だけを買えばあとはほとんど消耗品の
費用は生じないものが多いのですが、最近では買ったレーザーを使用するため
にさらにお金を支払わなければいけないというようなシステムを導入している
器械もあります。
その一つの例がI2PLです。
初代、および2代目のI2PLは本体を買うだけで使用できたのですが、3代目
の『I2PL+』という器械になってからは、5万発もしくは10万発を使用
する毎に高いUSBメモリーを買わなければ使用できない仕組み(クレジット制)
に変更されてしまいました。
クレジット制になった代わりに、万一フラッシュランプが自然に寿命を迎えて
使えなくなってしまった時は無償で交換するというシステムになっています。
(ランプ交換は高額)
一見、ユーザーにとって有利なように思えますが、少なくとも当院には全く
メリットがありません。
当院ではランプが寿命を迎えるまで使い切ることはなく、ランプが劣化して
出力が落ちた時点でランプ交換を行っているため、無償ランプ交換の恩恵に
あずかることは全くありません。
USBメモリーを買わされるようになった分だけ、余計な出費を強いられる
ようになりました。
このような重要なシステム変更を十分に理解しないまま、初代・2代目と同じ
ように3代目も購入し、購入時に付属していたUSBメモリーの使用限度を
超えてI2PLが使用できなくなった時に初めてシステムの変更を知りました。
I2PLの治療効果に関しては、新しい方が効果が高いということはなく、
操作性が良くなっただけですので、必ずしも新しい器械に更新する必要もあり
ませんでした。
私がうかつだったのですが、高額な機器を買った上にそれを使用するためには
また高いお金を払わなければいけないというシステムには今でも納得がいきま
せん。
前回書いた通り、医療機器の多くは医療機器としての国内承認を取ることになる
のですが、承認を得た器械は国内における定価を設定することになります。
そして、これは日本国内独特の商習慣なのかどうかは知りませんが、医療機器の
定価は実売価格に比べてとんでもなく高い価格が設定されることが通例です。
例えば実売価格が1000万円位のレーザーの定価は、3000万円~4000
万円くらいであることが一般的です。
いくら医療用とはいえ、たかがレーザー装置一つが土地付き新築一戸建てと同じ
価格というのはにわかに信じられません。
業者は初めから3000万円~4000万円で売るつもりはなく、あくまで公表
される定価として高額な値段をつけるようです。
なぜ、こんなに高い定価をつけるのかというと、公的病院や大病院が高い器械を
買う場合は、定価から大きく値引いて業者から買ったという構図を作りあげる
ことが重要なのだそうです。
しかし、価格差があまりにも大きいとキックバックなどの不正の温床になりかね
ないと危惧するのは私だけでしょうか。