医療機器の承認・未承認

美容クリニックが使用する医療機器には、厚労省からの承認を受けた

器械と承認を受けていない未承認器の2つがあります。

 

医療機器にはそれを使用したことによって得られる効能・効果という

ものがあり、承認器というのはお役所からその効能・効果についてお

墨付きをもらったということになります。

 

未承認器というのはお墨付きをもらえていない器械ということになり

ますが、お墨付きをもらえていないような器械は効果の信頼性が乏し

いのかといえば必ずしもそうとはいえません。

 

美容医療で使用されている医療機器は、未承認器が非常に多く、承認

器だけを使用していたのでは現在の日本の美容医療はほとんど成り立

ちません。

 

 

未承認の器械だからと言って、それを使用すること自体は違法ではな

く、医師個人の裁量に基づいて治療に使用することは許されています。

 

日本の医療の中心は保険診療ですが、保険適応の治療に使える医療機

器にするためには承認を得なければいけません。

 

 

承認器であっても保険診療において使用が認められない器械もありま

す。

 

例えば色素性疾患に対して、QスイッチルビーレーザーやQスイッチア

レキサンドライトレーザーは保険適応がありますが、Qスイッチヤグレ

ーザーは適応がありません。

 

Qスイッチヤグレーザーの中には承認を得た器械もありますが、承認を

得たからと言って保険診療に使用できるわけではありません。

 

 

保険診療の制約を受けない美容医療においては、医師の裁量のもとに未

承認器を使用することができるので、保険診療での診療を想定しない限

り、メーカーが医療機器の承認を得ることが必須というわけではありま

せん。

 

以前に比べて最近は医療機器の承認を得られやすくなったせいなのか、

レーザー系の治療器では承認を得る機器が増えているのですが、タルミ

治療などに使われる高周波やHIFU治療器では承認を得た器械はほとんど

ありません。

 

脱毛用のレーザー治療器が、「脱毛」という効能・効果で承認を得られ

るようになったのも実はごく最近のことです。

 

医療機関で最も多く使用されている脱毛用レーザーは、発売当初から医

療機器としての承認が得られてはいたのですが、承認が得られていた効

能・効果は皮膚の色素性病変に対するものであって、脱毛効果に対する

ものではありませんでした。

 

脱毛用レーザーとして売りたいのだけれど、効能を「脱毛」としてしまう

と医療承認がなかなか取れないので、色素性病変用としてとりあえずは承

認だけは取っておいたということでしょう。

 

 

同じようなことは、フォトフェイシャルやI2PLなどのIPL治療器について

も当てはまります。

 

ご存知だと思いますが、フォトフェイシャルやI2PLは顔全体のシミの改

善や赤みの改善、毛穴の開きの改善など、肌の若返り治療として行われ

ます。

 

IPL治療器は、一部アザの治療として利用できますが、ほぼ美容目的で使

用される機器と考えられるので、本来医療用の承認を得ることはハードル

がかなり高いと考えられます。

 

ところが不思議なことに、フォトフェイシャルやI2PLに使われる器械は

発売当初から医療用の承認が得られていました。

 

 

何故IPL治療器が早い段階から承認が取れたのか疑問に思ったのですが、

IPL治療器治療器の効能・効果の欄を調べてみてその答えがわかりました。

 

IPL治療器の効能・効果には、色素性病変に対する記載は一言もなく、そ

こには『光の温熱効果による血流の改善、疼痛又は炎症の緩解を行うこと

を目的とする』と書いてあるのです。

 

つまり、肌をきれいにする器械としてではなく、温熱治療器とすることに

よって承認を得られやすくしていたわけです。

 

I2PLの説明書から

 

 

承認か未承認かは治療効果の差ではないので、未承認だからといって

治療効果に劣るということはないのですが、未承認がゆえのハンディ

キャップもあります。

 

 

未承認器の広告の制限は欠点の一つですが、外国製未承認医療機器を

購入するにあたって一番面倒なのはその入手方法です。

 

承認器であれば、たとえ外国製であっても日本の代理店から購入する

ことができてリース購入も可能となるのですが、未承認器になると個

人輸入という形でしか入手することができず、手続きがちょっと面倒

くさくなります。

 

海外の会社から直接個人輸入しなければいけないために、リース購入

という方法も取れません。

 

代金は銀行からの海外送金となりますが、この手続きが結構面倒です。

 

海外送金に慣れていない茨城県内の銀行支店だと、担当する銀行員が

手続きをよく理解していないことも多く、長い時間待たされます。

 

さらに待っている時間に毎回金融商品の勧誘があったりしてちょっと

うんざりです。

 

 

消耗品を必要としない機器なら海外送金は最初の1回だけですむので

まだ良いのですが、ウルセラのように高額な消耗部品を使う製品の場

合は、消耗品を買うたびに海外送金手続きをしなくてはいけないので

とても面倒です。

 

事務長がいるようなクリニックなら問題ないかもしれませんが、当院

のように院長自身が雑務をこなさないといけない小さなクリニックで

は、このような手間は本当に困りものです。

 

 

医療機器というのは基本的に医療機関しか買うことができず、販売す

る側にとっても購入側にとっても制限を伴うので、機器によってはあ

えて「医療機器」とはせずに、「薬機法適用外の器械」として売ると

いう手があります。(薬機法とは、「医薬品、医療機器等の品質、有

効性及び安全性の確保に関する法律」という長い名前の法律の略で、

以前は薬事法とよばれていました。)

 

医療機器でなければ医師免許がなくても買えますし、医師免許がない

人が施術を行っても違法ではありません。

 

よく「メディカルエステ」を併設しているクリニックがありますが、

メディカルエステのエステティシャンは医療機器を操作することがで

きないので、仮に経営者が医師であったとしてもメデイカルエステ内

で使用できる機器は「薬機法適用外の器械」ということになります。

 

 

様々な医療機器においては日本は世界をリードする立場ですが、何故

だか美容医療の医療機器開発に参入してくる日本企業はあまりありま

せん。

 

日本製の性能の良い器械が登場してくることを期待しているのですが、

保険適応外の美容医療の分野は日本企業には魅力がないのでしょうか。

 

 

今朝久しぶりに茨城南部を震源とする震度4の地震がありました。

 

茨城南部は地震の巣で非常に地震が多いのですが、ここ最近は地震が

あまりに少なくて少し心配しています。

 

地震が少なくて心配するというのは変な話かもしれませんが、小さい

地震がある方がエネルギーを放出しているようで安心できます。

 

あまりに地震が少ないと大きな直下型地震が起きるのではないかと心

配になります。

 

今日の地震はマグニチュード5.0ということですが、マグニチュー

ドは「2」違うと地震のエネルギーは1000倍違います。

 

直下型地震で予想されるマグニチュード7.0に対して、マグニチュ

ード5.0の地震1回なんてはっきり言って焼け石に水です。

 

関西に住んでいる方々にはなかなか理解しづらいことかもしれません

が、地震の多い関東、中でも茨城に住んでいると全く地震がない日が

続くとどことなく不気味なんです。