肝斑の治療

肝斑の特徴と様々な治療法

肌に対する刺激を避け、まずは薬による治療が第一選択です。

肝斑の治療

肝斑は主として女性に生じ、30歳以降に発症することが多いシミです。
両頬を中心として左右ほぼ対称性に地図状に広がる褐色調のシミです。
紫外線に敏感で、しばしば妊娠・出産などで悪化することから女性ホルモンの影響を受けていると考えられています。
鼻の下や額中央なども好発部位ですが、下まぶたには生じません。

肝斑は頻度の高いシミですが、誤診例も非常に多いシミでもあります。
両側の頬にシミがあるということだけで、肝斑以外のシミを肝斑と診断されてしまう傾向があります。
特にADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の多くは肝斑と誤診されています。

ADMと肝斑の鑑別の図

ADMと肝斑の鑑別の図

中には典型的な老人性色素斑でありながら、両側にあるということだけで肝斑と診断されていることもあります。
両頬というのはあらゆるシミの好発部位であり、肝斑と診断するためにはそのほかの特徴も考慮しなければなりません。
肝斑と肝斑以外のシミとでは治療法が全く異なるので、最初の診断は大変重要です。
ただし、肝斑はADMや老人性色素斑などとの合併例が多く、診断が非常に難しい症例が多いことも事実です。

肝斑の原因についてはよくわかっていないことが多いのですが、慢性的な摩擦刺激が原因の一つと考えられています。
普段の洗顔や化粧行為、化粧落しによって顔を手で触ることが肝斑の原因となります。
洗顔や化粧落しを念入りに行う人の方が肝斑は悪化します。
このことから肝斑治療の第一歩は、顔をできるだけ触らないようにすることと言えます。
洗顔は泡洗顔とし、化粧落しにコットンは使用しないようにします。
化粧品の種類は最小限にして、できるだけ落しやすい化粧品を選びます。

肝斑治療の基本は薬です。
トラネキサム酸とビタミンCの内服を行います。
効果がある場合、6ヶ月~1年くらいを念頭に内服を続けます。
肝斑の診断に間違いがない場合は、1~2ケ月の内服で大体7~8割位の人で肝斑は薄くなります。
内服治療は、肝斑が明らかな人だけでなく、肝斑の存在が疑われる人であってもまず行うべき治療法です。
診断に迷った場合、トラネキサム酸の内服で結果としてシミが薄くなれば、そこに肝斑があったことがわかります。
副作用が非常に少ない治療法なので、結果的に効果がなかったとしても試してみる価値があります。
また見た目上効果がなかった場合でも、その後レーザーや光線治療を行う時はあらかじめトラネキサム酸治療を行っておくことによってレーザー照射後の色素沈着も起こりづらくなり有益です。
通常、トラネキサム酸とビタミンCの内服とともにハイドロキノン軟膏を処方します。
ハイドロキノンはメラニンの沈着を抑えますが、塗る時の摩擦が肝斑を悪化させる可能性があるので、擦り込むような塗り方はしないようにします。
肝斑は薬で完治するわけではなく、薬によって症状を抑えているととらえるべきです。
薬を中止するとしばしば再発することがあります

2ヶ月間トラネキサム酸の内服を続けても肝斑が改善しない場合は、レーザートーニング治療を行います。
当院ではQ-YAGレーザーを使用しています。
当院で使用しているレーザーはトップハット型と呼ばれる平らなレーザービームで、均一なエネルギーで照射できるので肝斑を刺激しすぎることがありません。
レーザートーニングは、10~14日間隔で5~8回を前提に行います。
通常3~4回目以降に効果が認められることが多いです。
8回目以降もレーザートーニング続けたい場合は、治療の間隔を1ヶ月間隔とします。

内服治療が無効な場合のもう一つの治療法として、トレチノインの外用があります。
トレチノインを1日1~2回塗布します。
トレチノインの副作用として皮剥けや発赤を起こしますが、肝斑治療の場合はあまり発赤が酷くならない程度にコントロールします。
効果がある場合は2~3週間で肝斑が薄くなりだします。
4~8週間を目安にトレチノイン治療を継続します。
トレチノインに対して抵抗性を示す肌質の人もいらっしゃり、その場合は効果も弱い傾向があります。

肝斑以外のシミが混在する場合は、薬治療を先行して行った後にできるだけ肝斑を刺激しないように配慮してI2PL治療やレーザー治療を行います。
肝斑とは全く関係のない部位のシミに関しては、最初からレーザー治療を行うこともできます。

治療費用(税別)

自費診療

トランサミン錠(250mg) 90錠(30日分) 1,600円
シナール錠 90錠(30日分) 800円
ハイドロキノン 10g 4,000円
トレチノイン 10g 6,000円
トレチノイン管理料 10,000円
処方料 600円
レーザートーニング 全顔1回 20,000円
両頬1回 10,000円

薬の副作用と禁忌

トランサミン 副作用 食欲不振、悪心、嘔吐 胸やけ、痒み、発疹
禁忌 血栓症のある方、トロンビン使用中の方
シナール 副作用 胃不快感、悪心、嘔吐、下痢
ハイドロキノン 副作用 ピリピリ感、赤み、痒み、アレルギー症状
トレチノイン 副作用 落屑、赤み、ヒリヒリ感、痒み
禁忌 妊娠中の方、妊娠を希望している方